近年、リモートワークが浸透したことで、二拠点生活や地方移住に踏み切る人が増えている。積極的に移住者の支援を行っている自治体もあり、新たなライフスタイルに注目が集まる中、今回はサーフィンをきっかけに憧れだった海辺の町に移住した家族を紹介していこう。
日本有数のサーフポイントが連なる九十九里浜の最南端に位置する千葉県一宮町。都内から車で60~80分、電車では特急で60分という良好な交通アクセスにより、週末には関東エリアを中心に多くのサーファーが訪れる。また東京五輪の新種目、サーフィン競技の会場となった釣ヶ崎海岸サーフィンビーチもあり、「世界最高レベル」ともいわれる良質な波に出会えるエリアである。

この町に2022年に移住した村田さんご一家。移住する前は都内のマンション暮らしだったが、サーフィン好きのご夫婦がこの町に出会い、その後、コロナ禍での環境や気持ちの変化が移住を後押ししたという。

一宮町との出会い

今から6年ほど前、当時プログラマーとして働いていた夫の翔平さん。
ある日、前職の同僚がサーフィンに誘ってくれて、初めて訪れたのが一宮町から少し南にある太東エリアだった。その後、一宮町エリアの海にも入るようになり、サーフィンにどんどん魅了されていく。そして月に2回ほど、サーフィンを目的に千葉県まで通うライフスタイルが始まるのだった。
「家族や仕事のこともあったので、2週間に1回くらいの頻度で、一宮町に通い始めました。当時は都内から車で通っていたので、夏は朝2時半くらいに家を出て、朝4時頃から一番乗りで海に入っていました。この一番乗りで海に入る習慣は今も変わらず、移住してからは、誰もいない海に入れる贅沢を、毎日味わえることが醍醐味ですね」と。
『海と向き合う時間』が、当時仕事に追われる毎日を過ごしていた彼にとって、リフレッシュできる時間だったのは間違いないようだ。

コロナ禍を機に移住へ

2020年コロナ禍となり、慣れないリモートワークが始まった。当時もタイミングを見計らっては、波を求めて一宮町へ通っていた翔平さんだが、その時期に第一子のひなちゃんが産まれ、生活スタイルも子どもファーストにシフト。
ただ、自宅で仕事をしているのにも関わらず、夜8時頃まで仕事に追われ部屋に籠ることもあり、平日は夕食を一人で食べる生活に、これからのライフスタイルを本格的に考えるタイミングを迎えていた。結婚した頃から夫婦揃って早く一軒家を建てたいという想いも重なり、勢いで一宮町への移住を決意したのだった。
「私も結婚前から一緒にサーフィンをしに、この町には来ていたので、安心感はありました。移住先はいくつかのエリアを検討しましたが、始発電車で都内まで通える駅があり、自然もあっていいかなと。実際に住んでみると思っていた以上に静かで暮らしやすいですね。近所の方も移住者が多く、みなさんアットホームです。ビックリしたのは、小学生の子たちと道ですれ違う時や公園で会った時に、みんな元気よく挨拶をしてくれること。地域全体で子育てをしているような感覚ですね」と奥様のかなさん。
「移住して一番変わったのは夫だと思います。仕事柄か暗い感じだったんですよ。プログラマーとして普段から仕事では間違い探しをしていたので、人のことも粗探しをするようなところがあったのですが、移住後に転職もして、人の良いところを探すようになりましたね。また、夫の帰宅時間も早くなり、家族との時間を持てるようになったことで、心身ともに健康になったと感じています」と、移住後の生活は良いことづくめの様子。 次回は翔平さんが転職した海近くの職場や毎日のルーティンをご紹介しよう。